50周年:記念講演(第2回)のご報告

筆者:
R3講演部会員 安達貴大(70期)

1 はじめに

令和3年4月23日,WEB配信で,五月会創立50周年記念事業である講演会(第2回目)が開催されました。開催のためにご準備いただいた先生方には,心より感謝申し上げます。

第2回目の講演会では,ZOOMを利用したWEB配信ということもあり,「ルポ入管―絶望の外国人収容施設」(ちくま新書)の著者であり,共同通信エルサレム支局長の平野雄吾様にエルサレムから,大阪弁護士会所属の弁護士中井雅人先生に大阪から,「入管問題を考える―無期限収容の実態と「裁量」行政」というテーマで,ご講演をいただきました。

 

2 講演内容

今回の講演ですが,平野様から,コロナのワクチン接種が進んでいるイスラエルの現状(マスクをしないで外出したり,談笑したりすることができている様子など)がまず冒頭で紹介されました。

それから,本論に入って,入管に関する種々の問題(①刑事事件における身柄拘束の場合と異なり,入管施設に収容されるにあたり司法の関与がなく,収容期間の制限もないといってよいこと,②収容された外国人への施設側による暴行・傷害事件の発生,③仮放免中の就労禁止や移動制限などの問題,④在留特別許可が法務大臣の裁量となっている問題,④日本は難民認定率が非常に低いという問題)などが説明されました。

それから,最後に,まさに今改正されようとしている,出入国管理及び難民認定法は,送還忌避者の増加や収容の長期化を防止するという説明がされているが,多くの問題点があることなどについて,ご講演いただきました。

平野雄吾様

また,中井先生からも,入管に関する種々の問題のほか,外国人労働者問題の歴史,出入国在留管理庁の統計などから明らかなこと,入管施設での食事,医療,暴力や仮放免者の問題,担当した事件(トルコ人暴行傷害事件)を通じ伝えたいことなどについて,ご講演いただきました。

中井雅人弁護士

五月会幹事長の桑原先生の閉会の挨拶で述べられていたことですが,入管問題を解決することなしに日本社会において,本当の多様性を実現できないのではないか,そういう意味で入管問題は,外国人の人権の問題であると同時に,我々自身の問題ではないか,ということを視聴者に強く感じさせる講演でした。

 

3 質疑応答

質疑応答では,入国管理センターの現場で働く人は問題意識を持っているのか,入管問題の関心が現在,高まり1つのターニングポイントになると思うがどうか,難民問題に対して一般人ができることは何か,入管施設への警察の立ち入りはないのか,などといった多数の質問がなされ,入管の実情や問題点などについて,認識を深める非常によい講演になりました。

 

4 さいごに

今回は,WEB配信での開催となりましたが,弁護士の先生方のみならず,ジャーナリストの方,学者の先生方,学生なども含め,多くの方々に講演をご覧いただき,WEB配信の視聴者としての参加者は延べ計91名,講師の平野様,中井先生を含むパネリストとしての参加者は計11名であり,合計102名でした。

今後,あと2回の記念講演会が予定されており,いずれの講演会も,非常に興味を引くテーマとなっておりますので,是非,ご参加下さい。